なぜ、自分はこんな状態に陥ってしまったのだろう。全ての答えは過去にある。孤独と絶望の中、精神の異常に見舞われたMは、一人暮らしのアパートでただ一人、自らの過去と精神の分析を開始する。そこで頭の中に描き出された世界の図式、関わる全てのメカニズム。机上の空論で、世界平和への道筋を導き出したMは、その理論を実践すべく、直ちにベンチャー企業であるW教育通信社に入社する。誰でも採用してしまう社長。その為もあってか、誰からも歓迎されず、期待されず、入社早々膨大な量の仕事を任される事になるMだが、W教育通信社の社員たちは、社長から与えられる膨大な量の仕事と限られた時間に追われ、皆一様に苦しんでいた。皆に向け、ホームページを使って様々な書き込みを展開しようと試みるM。しかしMは、ホームページの内容だけでなく、自分のプライバシーや言動までもが外部に漏れていると感じていた。そんな状態の中、バカにされ、舐め腐られ、怒鳴られ、呆れられながらも必死に仕事に取り組むM。動作がトロイ、思考が鈍い、物忘れが激しい、言葉がうまく出てこない、そんな自分に歯痒さを覚えながらも、自らの可能性を信じて成長しようと奮闘する。会社の内部は荒んでいた。社員同士が繰り広げる不協和音の中で、元ヤクザの社員ヤッさんや、心を許せる同僚の闇医らと共に、少しずつ成長を遂げるMだが、自分のプライバシーが侵害されている事に動揺を隠せない。
一方、Mは世界平和を実現する為、一流の営業マンであり、一流の交渉術を持つ社長を政治家にしようと決意する。その方法は、社長自ら政治家になるよう仕向けるというもの。会社を変える為には、社長を変えなければならない。一流は全てに通ず。社長は政治家としても、人間としても一流になれる可能性を秘めている。もちろん、社長としても。行動を変える為にはまず意識を変える事、考え方を改める事だ。Mの展開する様々な書き込みに、良くも悪くも興味を示す社員たち。誰もが世界平和への道筋を想像できるように導く事ができれば、世界平和は実現できる。そんな考えの元、自らの理論を実践し、会社や世の中を変えてやろうと目論むM。当初鼻にもかけられなかったMの書き込みが、徐々に会社の内部を変えていく。少しずつ皆から認められ始めるMだが、プライバシーを侵害してくるストーカーの存在に、より一層精神を追い込まれてゆく。自分のプライバシーは本当に侵害されているのか。妄想か、はたまた現実か、動揺するMの思考は増幅する。近未来、社長はこの国の首脳となり、世界平和実現への取り組みを開始する。しかし、その発端であるはずのMの書き込みは、テロへと向かう道を示唆していた。